僕は都内のある大学のテニスサークルに所属しています。
なぜ入ったかと言うと、松本という友人に可愛い先輩がいると勧められたからです。
名前は高橋先輩とのこと。
たったそれだけの情報でいざ入ってみると、めちゃくちゃ可愛い。
僕の通っていた高校は小さく、そんなに可愛い女性はいなかったし、いたとしてもほぼ必ず彼氏がいました。
しかしここは違います。
都会のマンモス大学。
一人や二人ぐらい可愛いけど彼氏のいない女性がいてもおかしくありません。
そこで、僕はその気になる高橋先輩に彼氏がいるか正直に聞いてみました。
すると、高橋先輩は彼氏が一度もできたことがないらしい。
しかも年下の男性がタイプとのこと。内心興奮しつつ、その感情を抑え話しているうちに徐々に仲良くなり、今度ご飯に行く約束をしました。
当日高橋先輩は綺麗な純白のワンピースを着てきていて、とても美しかったです。
しかし、彼女には致命的な欠点があったのです。
それは、口臭でした。
よく言えば「動物園」、悪く言えば「ドブ」の臭いがしました。
しかもその臭いは、テーブルを挟んだ僕にも来るぐらいだから、相当なものです。
最初に会った時は興奮で口臭に気づかなかっただけだったのだと、僕は悟りました。
僕はどうしようかと悩みました。正直に伝えるべきか、それとも黙っておくべきか。
また臭いは覚悟して付き合うべきか。結局その日はそのまま別れて、その夜は余韻に浸ることもできず、「口臭」が頭から離れませんでした。
そしてそこから数週間、ラインは続けられてもあの不快な臭いが忘れられず、中々次のデートに誘えませんでした。
しばらくしたら、僕はある決意をしました。
次のデートで高橋先輩の口臭が治っていなかったら正直に言おう、と。
そこで、僕は早速次のデートの予定を決めて、当日を待ちました。
すると、驚くべきことに、口臭が治っていました。
正直、7割以上の確率で臭いだろうな、と思っていたので、衝撃を受けました。
高橋先輩の口臭が無臭になっていたのです。そこで僕は正直に聞きました。
「今日、口がいい臭いだね」すると高橋先輩は秘密を教えてくれました。
なんと、高橋先輩を勧めてくれたあの松本が馬鹿正直に高橋先輩に口臭について言っていたらしい。
なんてデリカシーのない奴だ、という憤りと、あの不快な臭いと別れられた嬉しさを抱きつつ、そのままの流れで僕たちは付き合うことになりました。